前回の記事では、母が2024年2月から8月にかけて受けた検査・診断・放射線治療入院までの医療費を、時系列で紹介しました。
第1回では、2024年2月から8月までの医療費総額が415万円を超えていた一方で、住民税非課税世帯かつ1割負担、高額療養費制度の適用により、実際の自己負担額は大きく抑えられていたことをお伝えしました。
第2回では、その後の話です。
2か月以上にわたる放射線治療のための入院を終えた後、今度は通院による抗がん剤治療が始まりました。
今回の記事では、2024年9月から2025年8月までの約1年間にかかった医療費を公開します。
抗がん剤治療というと、「毎月かなり高額な医療費がかかるのでは」と不安に感じる方も多いと思います。
ですが実際には、月によって負担額にはかなり差があり、高額療養費制度が適用される月もあれば、適用されない月もありました。
この記事でも闘病記ではなく、FIRE後の生活防衛という観点から、実際にどれくらいの医療費が発生したのかを現実的に見ていきます。
第1回の振り返り
第1回では、2024年2月から8月までの医療費として、以下のような実例を紹介しました。
- 原因不明の発熱と倦怠感から始まった通院
- 2024年4月下旬に頭部血管肉腫と判明
- 2024年6月から7月にかけて放射線治療のため長期入院
- 2024年8月に退院し、ここから抗がん剤治療へ移行
入院中は医療費総額が月100万円を超える月もありましたが、高額療養費制度や非課税世帯向けの軽減により、自己負担額はかなり抑えられていました。
一方で、退院後の通院抗がん剤治療では、長期にわたって継続的に支出が発生することになります。
第2回では、その「長く続く治療費」のリアルを見ていきます。
今回のケースの前提条件
今回紹介するケースの前提は、年齢を除いて第1回と同じです。
- 父と母の二人暮らし
- 父(当時81歳)、母(当時78歳)ともに後期高齢者
- 収入は年金(月15万円程度)
- 住民税非課税世帯
- 医療費の自己負担割合は1割
なお、本記事で紹介している通院費には、がん治療に直接関係する通院だけでなく、内科での高血圧治療、眼科での白内障・緑内障治療、歯科での口腔ケアなど、もともと継続していた通院費用も含めています。
実際の生活では、医療費は抗がん剤治療だけが単独で発生するわけではなく、その他の通院も同時に続いていくためです。
そのため今回も、がん治療費だけを切り分けるのではなく、その時期に実際に発生した医療費全体を計上しています。
2024年9月 退院後すぐに抗がん剤治療がスタート
2024年8月に退院した後、すぐに抗がん剤治療が始まりました。
抗がん剤は、3週実施、1週休みのサイクルで一生続けることになります。
頭部血管肉腫は、それほど予後の厳しい希少がんです。
つまり、退院は「治療の終了」ではなく、「入院治療から通院治療への移行」にすぎませんでした。
2024年9月
- 通院4回
- 医療費:67,870円
- 自己負担額(1割):6,787円
- 高額療養費適用なし
9月は通院4回で、医療費総額は67,870円でした。
自己負担額は6,787円で、高額療養費制度の適用はありませんでした。
入院時ほどの大きな請求には見えませんが、退院直後からすぐに継続的な通院費が発生している点は、FIRE後の家計を考えるうえで見逃せないポイントです。
2024年10月〜12月 高額療養費が適用される月とされない月がある
通院による抗がん剤治療が続く中で、高額療養費制度が適用される月と、そうでない月がありました。
これは通院回数や治療内容によって、その月の自己負担額が上限に届くかどうかが変わるためです。
2024年10月
- 通院6回
- 医療費:140,860円
- 自己負担額(1割):14,086円
- 高額療養費支給額:6,086円
- 高額療養費適用後:8,000円
10月は通院6回で、医療費総額は140,860円でした。
自己負担額は14,086円でしたが、高額療養費支給額6,086円により、最終的な自己負担は8,000円です。
2024年11月
- 通院2回
- 医療費:56,840円
- 自己負担額(1割):5,684円
- 高額療養費適用なし
11月は通院2回で、医療費総額は56,840円でした。
自己負担額は5,684円で、この月は高額療養費制度の適用はありませんでした。
2024年12月
- 通院5回
- 医療費:87,610円
- 自己負担額(1割):8,761円
- 高額療養費支給額:761円
- 高額療養費適用後:8,000円
12月は通院5回で、医療費総額は87,610円でした。
自己負担額は8,761円でしたが、高額療養費支給額761円により、最終的な自己負担は8,000円になりました。
この3か月を見ると、通院抗がん剤治療では毎月必ず高額療養費制度が適用されるわけではないことが分かります。
ただし、適用される月はきちんと上限で抑えられており、家計へのダメージは限定的でした。
2025年1月〜4月 通院回数が増える月は負担が上限に届きやすい
年が明けても、抗がん剤治療は続きます。
通院回数が多い月ほど、自己負担額が高額療養費制度の上限に達しやすくなります。
2025年1月
- 通院8回
- 医療費:119,530円
- 自己負担額(1割):11,953円
- 高額療養費支給額:3,953円
- 高額療養費適用後:8,000円
2025年2月
- 通院7回
- 医療費:61,360円
- 自己負担額(1割):6,136円
- 高額療養費適用なし
2025年3月
- 通院5回
- 医療費:47,740円
- 自己負担額(1割):4,774円
- 高額療養費適用なし
2025年4月
- 通院9回
- 医療費:99,860円
- 自己負担額(1割):9,986円
- 高額療養費支給額:1,986円
- 高額療養費適用後:8,000円
この期間も、月によって負担額には差があります。
1月や4月のように通院回数が多い月は自己負担額が上限を超え、高額療養費制度が適用されました。
一方で、2月や3月のように比較的少ない月は、制度適用なしで6,000円前後、あるいは5,000円未満に収まっています。
2025年5月〜8月 長期通院でも家計負担は比較的読みやすい
抗がん剤治療が長期化すると、毎月の負担が読みにくく不安になりがちです。
ですが実際には、住民税非課税世帯・1割負担の前提では、ある程度の範囲に収まりやすいことも分かりました。
2025年5月
- 通院6回
- 医療費:77,560円
- 自己負担額(1割):7,756円
- 高額療養費適用なし
2025年6月
- 通院6回
- 医療費:76,490円
- 自己負担額(1割):7,649円
- 高額療養費適用なし
2025年7月
- 通院9回
- 医療費:123,820円
- 自己負担額(1割):12,382円
- 高額療養費支給額:4,382円
- 高額療養費適用後:8,000円
2025年8月
- 通院8回
- 医療費:100,530円
- 自己負担額(1割):10,053円
- 高額療養費支給額:2,053円
- 高額療養費適用後:8,000円
この4か月も、自己負担額はおおむね5,000円台〜8,000円台に収まり、通院回数が増えた月のみ高額療養費制度で上限調整される形でした。
2024年9月〜2025年8月までに実際にかかった金額
ここまでの金額を一覧にすると、次のようになります。
| 月 | 主な内容 | 医療費 | 自己負担額 (1割) |
高額療養費 支給額 |
高額療養費 適用後の負担額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2024年9月 | 通院4回 | 67,870円 | 6,787円 | – | 6,787円 |
| 10月 | 通院6回 | 140,860円 | 14,086円 | 6,086円 | 8,000円 |
| 11月 | 通院2回 | 56,840円 | 5,684円 | – | 5,684円 |
| 12月 | 通院5回 | 87,610円 | 8,761円 | 761円 | 8,000円 |
| 2025年1月 | 通院8回 | 119,530円 | 11,953円 | 3,953円 | 8,000円 |
| 2月 | 通院7回 | 61,360円 | 6,136円 | – | 6,136円 |
| 3月 | 通院5回 | 47,740円 | 4,774円 | – | 4,774円 |
| 4月 | 通院9回 | 99,860円 | 9,986円 | 1,986円 | 8,000円 |
| 5月 | 通院6回 | 77,560円 | 7,756円 | – | 7,756円 |
| 6月 | 通院6回 | 76,490円 | 7,649円 | – | 7,649円 |
| 7月 | 通院9回 | 123,820円 | 12,382円 | 4,382円 | 8,000円 |
| 8月 | 通院8回 | 100,530円 | 10,053円 | 2,053円 | 8,000円 |
| 累計 | 2024年9月〜2025年8月 | 1,060,070円 | 106,007円 | 19,221円 | 86,786円 |
2024年9月〜2025年8月の累計
- 医療費総額:1,060,070円
- 自己負担額(1割)の合計:106,007円
- 高額療養費支給額の合計:19,221円
- 実際の支出合計:86,786円
この数字を見ると、約1年間の通院抗がん剤治療で、医療費総額は106万円超、最終的な自己負担額は約8.7万円でした。
月平均で見ると、最終的な自己負担額はおよそ7,200円程度です。
実例からわかったこと
今回の通院抗がん剤治療の実例から、FIRE後の医療費について感じたことは大きく4つあります。
1. 通院抗がん剤治療は「毎月ものすごく高額」ではない月も多い
抗がん剤治療という言葉から、毎月かなり重い医療費負担を想像する人は多いと思います。
ですが今回のケースでは、住民税非課税世帯・1割負担という前提もあり、月によっては5,000円台〜7,000円台で収まっている月も少なくありませんでした。
2. 高額療養費制度は「入院時だけ」ではなく通院治療でも支えになる
高額療養費制度は、長期入院のときだけ役立つ制度と思われがちです。
しかし実際には、通院抗がん剤治療でも、通院回数や治療内容によっては月の自己負担が上限を超え、支給対象になります。
今回も、10月、12月、1月、4月、7月、8月は高額療養費制度によって最終負担が8,000円に抑えられました。
3. 長期治療では「毎月の上振れ」が抑えられる安心感が大きい
FIRE後の家計にとって怖いのは、毎月の支出が大きくブレることです。
今回のケースでは、通院回数が増えた月でも、高額療養費制度によって上限がある程度決まっていたため、家計管理の面ではかなり安心感がありました。
つまり、長期治療そのものは重い現実ですが、支出の上振れが制度で抑えられていることは、FIRE生活を続けるうえで大きな支えになります。
4. それでも「通院が長く続くこと」自体は負担になる
一方で、月ごとの負担が抑えられているからといって、治療が軽いわけではありません。
通院回数は月2回から9回まで幅があり、これが1か月ではなく、何か月も、何年も続く可能性があります。
その意味で、FIRE後の医療費を考えるときは、「1回の大きな支出」だけでなく、小さめの支出が長期間続くことも想定しておく必要があると感じました。
抗がん剤治療が続いてもFIRE生活は続けられるのか
今回の実例を見る限り、少なくとも日本で公的医療保険が適用される範囲の通院抗がん剤治療については、医療費だけを理由にFIRE生活がすぐに破綻する可能性は高くないと感じました。
約1年間の通院治療で、医療費総額は106万円を超えました。
それでも、最終的な自己負担額は約8.7万円です。
もちろん、これは
- 住民税非課税世帯であること
- 1割負担であること
- 通院中心で、差額ベッド代や食事療養費が継続的に発生しないこと
といった条件があるため、すべての人にそのまま当てはまるわけではありません。
それでも、退院後に抗がん剤治療が長く続くケースでも、日本の公的医療保険制度と高額療養費制度は、家計をかなり下支えしてくれることが分かりました。
まとめ
今回は、2024年9月から2025年8月までの通院による抗がん剤治療の医療費を時系列で紹介しました。
ポイントをまとめると、次のとおりです。
- 退院後も、すぐに抗がん剤治療が始まり通院費が継続的に発生する
- 通院抗がん剤治療では、高額療養費制度が適用される月とされない月がある
- 約1年間の医療費総額は106万円超だった
- それでも最終的な自己負担額は約8.7万円に抑えられた
- FIRE後に大事なのは、医療費の総額ではなく、最終的な自己負担額とその継続性を見ること
FIRE後の暮らしには、「病気が長引いたらどうしよう」という不安がつきものです。
ですが今回の実例を見ると、少なくとも通院による抗がん剤治療については、制度を前提に考えれば、医療費だけで生活が一気に破綻するわけではないことが分かります。
今回のブログはここまでです。
次回は、がんが再発して再び入院することになり、入退院を繰り返すようになってからの費用を具体的に紹介したいと思います。
