FIRE後の暮らしを守るお金の話③ がん再発後の医療費はいくらかかる?再入院から最期までを実例で解説

税金・社会保険

前回までの記事では、母のがん治療にかかった医療費を時系列で紹介してきました。

第1回では、原因不明の発熱と倦怠感から始まった通院、病名判明、放射線治療のための長期入院までにかかった医療費をまとめました。

第2回では、退院後に始まった通院による抗がん剤治療について、約1年間の医療費を公開しました。

そこまでの流れを見ると、日本の公的医療保険制度と高額療養費制度は非常に強く、住民税非課税世帯かつ1割負担という条件のもとでは、医療費の自己負担額はかなり抑えられていました。

そして第3回は、その続きです。

抗がん剤治療が1年を過ぎた2025年9月、がんの再発が見つかり、再び入退院を繰り返すことになります。

今回は、再入院から母が最後を迎えるまでの医療費を公開します。

この記事も闘病記ではありません。

伝えたいのは、病状のつらさそのものではなく、がんが再発し、再び入院が必要になったとき、実際にどれくらいの医療費が発生したのかというお金のリアルです。

FIRE後の暮らしでは、長期治療に加えて再発や再入院の可能性もあります。

そのとき家計にどれくらいの負担が発生するのかを、実例ベースで見ていきます。

第1回・第2回の振り返り

ここまでの流れを整理すると、次のようになります。

  • 2024年2月から原因不明の発熱と倦怠感で通院開始
  • 2024年4月下旬に頭部血管肉腫と判明
  • 2024年6月〜8月に放射線治療のため入院
  • 2024年9月から通院による抗がん剤治療が始まる
  • 2025年8月まで、約1年間にわたり抗がん剤治療が継続
  • 2025年9月、がんが再発し再入院

第1回では、検査・診断・入院治療までの医療費を紹介しました。

第2回では、退院後の通院抗がん剤治療について、長期にわたる医療費の実態を見てきました。

第3回では、その延長線上にある再発後の医療費を見ていきます。

今回のケースの前提条件

今回紹介するケースの前提も、これまでと同じです。

  • 父と母の二人暮らし
  • 父(当時81歳)、母(当時78歳)ともに後期高齢者
  • 収入は年金(月15万円程度)
  • 住民税非課税世帯
  • 医療費の自己負担割合は1割

なお、本記事で紹介している医療費には、がん治療に直接関係する費用だけでなく、継続していた他の通院費用が一部含まれている可能性があります。

ただし、この期間は入院中心となっているため、主な費用は再発がん治療とそれに伴う入院費です。

今回も、がん治療だけを切り分けた理論値ではなく、その時期に実際に家計から発生した医療費全体を示しています。

2025年9月 がん再発が見つかり、切除手術のため入院

2025年9月、がんの再発が見つかり、切除手術のため入院することになりました。

抗がん剤治療が続いていても、再発によって再び手術や入院が必要になる。

ここは、FIRE後の医療費を考えるうえでも非常に重い現実だと思います。

2025年9月

  • 通院3回
  • 入院12日間
  • 医療費:889,770円
  • 自己負担額(1割):88,977円
  • 高額療養費支給額:64,377円
  • 高額療養費適用後:24,600円
  • 食事療養費:23,460円
  • 食事療養費自己負担額(非課税世帯):8,160円
  • 寝具等レンタル費:5,148円

この月に実際に家計から出ていった金額は、次のとおりです。

  • 医療費自己負担:24,600円
  • 食事療養費自己負担:8,160円
  • 寝具等レンタル費:5,148円
  • 合計:37,908円

再発による入院という重い局面でも、医療費そのものは高額療養費制度によって24,600円に抑えられていました。

2025年10月 予定より長引いた入院

2025年10月は、本来2週間ほどの予定だった入院が1か月以上に及び、ようやく退院することになります。

入院が長引くと、医療費だけでなく、食事療養費やレンタル費などの周辺費用も積み上がっていきます。

2025年10月

  • 入院27日間
  • 医療費:1,085,550円
  • 自己負担額(1割):108,555円
  • 高額療養費支給額:83,955円
  • 高額療養費適用後:24,600円
  • 食事療養費:54,510円
  • 食事療養費自己負担額(非課税世帯):18,960円
  • 寝具等レンタル費:11,583円

この月の実際の支出は、次のとおりです。

  • 医療費自己負担:24,600円
  • 食事療養費自己負担:18,960円
  • 寝具等レンタル費:11,583円
  • 合計:55,143円

医療費総額は100万円を超えていますが、最終的な自己負担額は大きく抑えられています。

ただし、長期入院になるほど、医療費以外の費用の存在感が増してくることも分かります。

2025年11月 退院後すぐに再入院

2025年11月、退院したのもつかの間、体調が悪化し再び入院することになります。

FIRE後の医療費を考えるとき、怖いのは「1回の大きな入院」だけではありません。

退院してもすぐ再入院になるような状態が続くことが、家計にも生活にも重くのしかかります。

2025年11月

  • 入院27日間
  • 医療費:2,016,400円
  • 自己負担額(1割):201,640円
  • 高額療養費支給額:177,040円
  • 高額療養費適用後:24,600円
  • 食事療養費:52,440円
  • 食事療養費自己負担額(非課税世帯):18,240円
  • 寝具等レンタル費:11,154円

この月の実際の支出は次のとおりです。

  • 医療費自己負担:24,600円
  • 食事療養費自己負担:18,240円
  • 寝具等レンタル費:11,154円
  • 合計:53,994円

医療費総額は200万円を超えました。

それでも、医療費自己負担は24,600円に抑えられています。

この数字は、日本の制度の強さを非常に象徴していると思います。

2025年12月 最期を迎える月

2025年12月、体調が回復することはなく、母は78歳の生涯を終えました。

この記事の目的は闘病の詳細を書くことではありませんが、FIRE後の暮らしを守るという視点から見ても、最期の時期まで医療費はどのように発生するのかを知っておくことには意味があると思います。

2025年12月

  • 入院17日間
  • 医療費:1,094,970円
  • 自己負担額(1割):109,497円
  • 高額療養費支給額:84,897円
  • 高額療養費適用後:24,600円
  • 食事療養費:29,670円
  • 食事療養費自己負担額(非課税世帯):10,320円
  • 寝具等レンタル費:9,273円

この月の実際の支出は、次のとおりです。

  • 医療費自己負担:24,600円
  • 食事療養費自己負担:10,320円
  • 寝具等レンタル費:9,273円
  • 合計:44,193円

最期の月も、医療費総額は100万円を超えましたが、自己負担額は制度によって大きく抑えられていました。

がん再発から最期までに実際にかかった金額

ここまでの金額を一覧にすると、次のようになります。

主な内容 医療費 自己負担額
(1割)
高額療養費
支給額
高額療養費
適用後の負担額
食事療養費 食事療養費
の負担額
寝具等
レンタル費
実際の
支出合計
2025年9月 通院3回・入院12日間 889,770円 88,977円 64,377円 24,600円 23,460円 8,160円 5,148円 37,908円
10月 入院27日間 1,085,550円 108,555円 83,955円 24,600円 54,510円 18,960円 11,583円 55,143円
11月 入院26日間 2,016,400円 201,640円 177,040円 24,600円 52,440円 18,240円 11,154円 53,994円
12月 入院17日間 1,094,970円 109,497円 84,897円 24,600円 29,670円 10,320円 9,273円 44,193円
累計 2025年9月〜12月 5,086,690円 508,669円 410,269円 98,400円 160,080円 55,680円 37,158円 191,238円
2025年9月〜12月の累計
  • 医療費総額:5,086,690円
  • 自己負担額(1割)の合計:508,669円
  • 高額療養費支給額の合計:410,269円
  • 高額療養費適用後の負担額合計:98,400円
  • 食事療養費:160,080円
  • 食事療養費自己負担の合計:55,680円
  • 寝具等レンタル費の合計:37,158円
  • 実際の支出合計:191,238円

この数字はかなり重い一方で、制度の強さもはっきり示しています。

再発後のわずか4か月で医療費総額は500万円を超えていますが、実際の支出合計は約19万円でした。

実例からわかったこと

今回の実例から、FIRE後の医療費について感じたことは大きく4つあります。

1. がんが再発すると、医療費総額は一気に大きくなる

通院による抗がん剤治療の時期と比べると、再発後は入院が中心になるため、医療費総額は一気に大きくなります。

実際、2025年11月は単月で200万円を超えました

再発後は、治療の負担だけでなく、数字のインパクトも非常に大きくなります。

2. それでも自己負担額は上限で抑えられる

一方で、家計にとって本当に重要なのは総医療費ではなく、最終的な自己負担額です。

今回の4か月では、毎月の医療費自己負担はすべて24,600円に抑えられていました

これは、高額療養費制度があるからこそです。

再発や再入院のような重い局面でも、制度が家計を大きく支えていることが分かります。

3. 長期入院では医療費以外の費用も無視できない

食事療養費や寝具レンタル費は、医療費本体ほど目立たないものの、長期入院では着実に積み上がります。

今回の4か月だけでも、

  • 食事療養費自己負担:55,680円
  • 寝具等レンタル費:37,158円

かかっています。

医療費だけ見ていると見落としがちですが、FIRE後の家計ではこうした周辺費用も含めて考える必要があります。

4. FIRE後に備えるべきなのは「高額医療費」だけではなく「繰り返す入退院」

今回のケースでは、再発後に一度入院して終わりではなく、退院後に再び状態が悪化し、再入院となりました。

FIRE後の家計管理では、単発の大きな支出よりも、入院・退院・再入院の繰り返しにどう耐えるかが重要だと感じます。

制度によって自己負担額は抑えられても、生活全体への負担がなくなるわけではありません。

がん再発後もFIRE生活は続けられるのか

今回の実例を見る限り、少なくとも日本で公的医療保険が適用される治療を受けるケースでは、がん再発による再入院があっても、医療費だけを理由にFIRE生活が即座に破綻する可能性は高くないと感じました。

2025年9月から12月までの医療費総額は500万円を超えました

それでも、食事療養費や寝具レンタル費を含めた実際の支出合計は約19万円です。

もちろん、これは

  • 住民税非課税世帯であること
  • 1割負担であること
  • 公的医療保険が適用される範囲の治療であること

といった条件があるため、すべての家庭に当てはまるわけではありません。

それでも、「再発して再入院になったら家計が終わる」と思い込む必要はないと感じています。

少なくとも日本の制度の中では、医療費の自己負担はかなり強く守られています。

まとめ

今回は、がん再発が見つかった2025年9月から、母が最期を迎えた2025年12月までの医療費を時系列で紹介しました。

ポイントをまとめると、次のとおりです。

  • がんが再発すると医療費総額は一気に大きくなる
  • 再発後の4か月で医療費総額は500万円を超えた
  • それでも高額療養費制度により、医療費自己負担は毎月24,600円に抑えられた
  • 一方で、食事療養費や寝具レンタル費などの周辺費用は着実に積み上がる
  • FIRE後に本当に備えるべきなのは、単発の高額医療費だけでなく、入退院を繰り返す生活全体への負担

このシリーズを通して見えてきたのは、日本の公的医療保険制度は思っている以上に強いということです。

医療費の総額だけを見ると不安になりますが、実際に家計から出ていく金額を見ると、印象はかなり変わります。

最後に、がん再発から最期を迎えるまでの医療費のすべてを表にまとめておきます。

対象期間 主な内容 医療費 自己負担額
(1割)
高額療養費
支給額
高額療養費
適用後の負担額
食事療養費 食事療養費
の負担額
寝具等
レンタル費
実際の
支出合計
第1回 2024年2月〜8月 検査・診断・放射線治療入院まで 4,156,640円 415,664円 312,136円 103,528円 136,680円 46,920円 29,601円 180,049円
第2回 2024年9月〜2025年8月 通院による抗がん剤治療 1,060,080円 106,007円 19,221円 86,786円 86,786円
第3回 2025年9月〜12月 がん再発後の再入院〜最期まで 5,086,690円 508,669円 410,269円 98,400円 160,080円 55,680円 37,158円 191,238円
総合計 2024年2月〜2025年12月 第1回〜第3回の総まとめ 10,303,410円 1,030,340円 741,626円 288,714円 296,760円 102,600円 66,759円 458,073円

高額療養費支給額の総合計は741,626円、医療費自己負担の総合計は288,714円です。

FIRE後の暮らしに不安を感じている方にとって、少しでも現実的な判断材料になればうれしいです。

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